論文ID: 2025-003
本研究では,中学生におけるいじめへの傍観者行動が多元的無知の影響を受けるかどうかを検討した。合計2,309名の生徒を対象に質問紙調査を行い,いじめを想起させる架空のシナリオを提示した後に,その場面での自身の傍観態度を報告させ,仲間の傍観態度を推定させた。また傍観行動をとらない場合の仲間からの評価懸念,および仲間の行動への同調意図を示させた。その結果,生徒は仲間が自分よりも傍観行動をとる可能性が高いと認識していることが示され,多元的無知がいじめ状況における傍観行動の持続に寄与する可能性が示唆された。さらに,個人的には傍観に反対しながらも仲間が同様の意見を持たないと信じる生徒(多元的無知群)は,自身と仲間双方が反対すると信じる生徒(自他ポジティブ群)よりも傍観行動への同調傾向が強かった。またこの同調傾向は仲間からの評価懸念によって媒介された。これらの知見に基づき,いじめ状況における傍観行動の心理的メカニズムを考察し,本研究の意義と限界について論じた。