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表面科学
Vol. 38 (2017) No. 3 p. 135-137

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http://doi.org/10.1380/jsssj.38.135

伝統産業と表面科学

カイコ(蚕)がつむぐシルク(絹)は,古来より衣服の材料として人間に利用されてきた。シルクは,肌に優しく,低CO2排出量の天然タンパク質長繊維として見直されつつある素材である。カイコを育てて繭からシルクをとる「養蚕」は,明治時代以降の日本の主要な外貨獲得産業となり,日本の近代化を支えた。しかし,世界恐慌や代替品の化学繊維の登場,さらに国際価格競争の激化や農家の高齢化により,日本の養蚕業は深刻な存亡の危機に立たされている。そこで近年,日本に蓄積された高度な養蚕技術と,遺伝子組換え等の新たなバイオテクノロジー技術を組み合わせることで,従来の養蚕業を新たな産業(新蚕業)に転換する試みが進められている。その象徴が,「ひかるシルク」である。ひかるタンパク質=蛍光タンパク質をシルクに組み込んで,ひかるシルクをつくる技術は,これまでにないシルクと新素材をつくり出すことができるだけでなく,カイコを医薬品の製造工場として利用可能にする技術であり,「蚕業革命」を起こしうる技術である。表面科学やナノテクノロジーの研究は,今後のシルク新素材・新デバイスや新利用法の開発において,非常に重要な役割を果たしていくことが期待される。

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