表面科学
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CVD法によるダイヤモンド薄膜
佐藤 洋一郎
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1989 年 10 巻 10 号 p. 799-803

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抄録

超硬質膜として比較的最近注目を集めているものとして, ダイヤモンド膜, ダイヤモンド状炭素膜, 立方晶窒化ホウ素 (c-BN) 膜がある。ここでは, 気相合成によるダイヤモンド膜について, 合成法, 性質, 今後の課題を中心に解説する。
ダイヤモンドは材料として広い分野で利用される可能性をもった物質である。ダイヤモンドの気相合成法は応用の観点から, 従来の高圧技術における多くの制約に束縛されない新しい合成技術として, また熱力学的に準安定域での結晶成長としての基礎的な立場の両面から関心を集めている。
各論に入るまえに, 気相合成ダイヤモンド膜の特徴について簡単に述べてみたい。その第1は, 気相法でシリコン, モリブデンなどの種々の基板上に成長するダイヤモンド膜は通常多結晶性で, 数千Å以下の薄膜を得ることは困難であり, より厚い膜の合成に適している。この点は, 非晶質で均質な薄膜が得られるダイヤモンド状炭素膜と対照的である。第2には, 同一の合成法でも合成条件, 特に基板温度とガス組成によって膜の組織, 結晶性などが大きく変化するばかりでなく, 黒鉛構造も析出することがあるという点である。

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