表面科学
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モンテカルロ・シミュレーションの固体表面分析への応用
村田 顕二
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1990 年 11 巻 9 号 p. 526-534

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抄録

モンテカルロ法は, 無数に可能な事象の中から乱数を用いることによって有限な個数の事象を無作為抽出して統計的結果を得る手法である。電子計算機のめざましい発達により, 膨大な計算量を必要とするモンテカルロ法も身近な研究手段として広く利用されるようになってきた。表面科学の分野では電子ビームやイオンビームの散乱問題あるいは蒸着機構や表面反応現象の解明等に応用されている。本稿では電子散乱問題を取り扱い, まず散乱モデルを構築するために必要な基礎物理量 (弾性および非弾性衝突断面積など) について記述し, 非弾性衝突のシミュレーションへの取り込み方の異なる三つのモデル (単一散乱モデル, ハイブリッドモデル, 非弾性衝突平均自由行程を用いるモデル) を取り上げ, それらの応用例を示している。まず, SEM・EPMAへの応用では, 反射係数や発生関数について, また弾性ピーク電子分光法への応用では弾性反射電子の反射率のエネルギー依存性や角度分布についてそれぞれシミュレーション結果と実験とを比較している。ESCAへの応用では光電子の角度分布について検討している。メスバウアー電子分光法等における薄膜透過電子のエネルギー損失の問題にハイブリッドモデルを適用した例を示している。

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© 社団法人 日本表面科学会
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