表面科学
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超高分解能1300kV電子顕微鏡の開発とその応用
シリコンの原子像及びジルコニア中の酸素原子の観察
松井 良夫堀内 繁雄北見 喜三横山 政人板東 義雄末原 茂松井 功勝田 禎二
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1991 年 12 巻 3 号 p. 157-163

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抄録
点分解能0.1nm(1A)と世界最高性能を有する超高分解能・超高圧電子顕微鏡の試作を行なった。最高加速電圧として1300kVを採用し,2重タンク方式により高い加速電圧安定性を実現した。対物レンズ等の設計では最新のコンピューター設計技術が駆使された結果,球面収差係数(Cs)を1.85mm(1300kVで)と極めて低くすることに成功した。本装置を用いて金の0.07nm(0.7A)格子像の撮影に成功した。またシリコンの[110]原子配列像,即ち個々のシリコン原子が黒点として観察される高分解能電顕像の撮影に初めて成功した。更にジルコニア(ZrO2)中のジルコニウム原子と共に,従来は観察が困難であった酸素原子を弱い黒点として撮影することにも初めて成功した。この様に酸素を始めとする軽元素の配列を,高分解能電顕像で直接観察できる展望が得られたことで,高温超伝導酸化物を始めとする各種無機材料の構造研究が,今後大きく進展するものと期待される。
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© 社団法人 日本表面科学会
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