表面科学
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液体-液体界面における蛋白質の2次元結晶化
青山 一弘
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1992 年 13 巻 3 号 p. 133-140

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抄録

水面膜に蛋白質分子を吸着させ結晶化したとき, その結晶性は膜の性質に大きく依存する。理想的な水面膜の条件は, 均一であること, 膜自体が柔らかく2次元方向の運動が自由であること, 蛋白質を吸着する力が強いこと, 蛋白質を変性させないことの4点である。単分子膜は, 膜厚の薄さにおいて理想的であるが, 以上の条件をすべて満足するような成膜物質は発見されていない。このような単分子膜は, 電荷をもった2次元の液体と見ることができるが, それを薄い3次元の液体層で代用することも可能であることが明らかになった。このとき, つぎの二つの点で不利である。第一に, 膜厚を薄く制御することが困難であるために, 電子顕微鏡観察時にノイズレベルが高くなってしまうこと。第二に, 界面へ吸着する分子が界面にとどまらず有機液層にまで混入するおそれがあることである。反対に単分子膜を作製するのに比べて格段に簡易な方法で均一な膜ができるという利点もある。電荷をもった有機液体としては, デヒドロアビエチルアミンを用いた。これを蛋白質溶液上に薄く展開すると, 溶液中の蛋白質分子はアミノ基の正電荷に吸着され水との界面に2次元結晶を形成する。得られた2次元結晶は単分子膜を用いたときに比べて, 結晶の大きさにおいても結晶性においても優れていることが確認された。

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