固体金属表面での触媒反応は工業的にも重要であり,多くの実験結果が蓄積されている。しかしながら,それらの電子的過程に関する理論的研究は,緒についたばかりであり,多くの課題が残されている。本稿では,われわれがこの分野で行った研究の中からいくつかを紹介する。まず,パラジウムを触媒とする水素分子の解離吸着と,アセチレンの水素化反応をクラスターモデルにより量子化学的に研究した結果について述べる。つぎに,電子移動をともなう表面一分子相互作用系に対する新しい理論モデル,Dipped Adcluster Mode1を紹介し,以前のクラスターモデルでは記述が困難であった銀表面における酸素分子の解離吸着の研究に応用し,その有用性を確認した例を示す。