表面科学
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高撥水性表面をもつフッ素含有SiO2薄膜
土谷 敏雄井ノロ 郷平
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1993 年 14 巻 9 号 p. 540-545

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抄録

撥水材料は,その撥水,撥油特性を利用して自動車塗装,飛行機用着水防止塗装,衣類などに用いられている。さらに,透光性に優れた材料が開発されれば,高層ビルのガラス窓用コーティング剤,自動車用フロントガラスおよびミラー用コーティング剤,各種着氷防止剤などへの応用が期待される。この研究では,ゾル・ゲル法を用いて,化学的耐久性と透光性に優れたSiO2薄膜を母体として,その中にフッ素を添加することにより,用いる基板との密着性が良く撥水性をもつ薄膜の作製を試み,さらに作製条件を変え接触角などの物性を測定し,撥水性が現れる機構について検討した。試料の作製のためにSi(OC2H5)4にEtOH,1-PrOH,H2O,0.1N-HClを加えて攪拝し,フルオロアルキルシランを少しずつ加えてコーティング溶液を作製した。この溶液にガラス基板をディップして引き上げ乾燥後,300~350℃で焼成しフッ素を含むSiO2薄膜を得た。得られた薄膜の接触角を測定した結果,約107度の値を得た。これはPTFEと同程度の値である。XPSの測定からフッ素はSiO2薄膜の表面に,-Si-O-Si-CH2CH2(CF2)7CF3のように結合していると考えられる。この材料は耐候性にも優れていると考えられることから,透明な撥水性材料としての展開が期待される。

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© 社団法人 日本表面科学会
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