1994 年 15 巻 8 号 p. 530-534
(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2結晶中に~10.4Kで超伝導を起こすκ相のほかに,新しい構造に対応するSTM像を見出した。同構造は,~200Kで金属一絶縁体転移をする相として存在が示唆されながら,試料の作成が困難とされ,これまで詳細が知られることなく,幻の相として扱われてきたα 相の構造に近い。実際,両相の境界における格子不整合の様子に加え,1-V曲線の温度依存性においても,~200Kでの金属一絶縁体転移,~10Kでの超伝導転移の両者が混在する可能性を示す特性の変化が得られた。ただし,新しく見出された構造が上記α相とは異なる新しい構造である可能性も残されており,現在,CDWの履歴依存性や揺らぎの問題などを含めて詳細を検討中である。