集束イオンビーム(FIB)微細加工法は,加工の状況を走査イオン顕微鏡(SIM)像で観察しながら,サブミクロン領域の特定位置を指定して薄片化できるという優れた能力をもつ。この特徴は,透過型電子顕微鏡(TEM)用断面試料作製にとってきわめて有用である。本稿では,FIB-TEMによる材料の表面界面研究に関する話題をいくつか紹介し,その実用性,工夫した点,実際上の問題点などを述べる。以下に示すように,Si酸化膜の膜厚の直接観察などのルーチンワークはもとより,ダイヤモンド薄膜などの超硬質かつ界面の剥離しやすい試料を確実に断面試料とし観察することができる。さらに,デバイスの故障箇所と同様に微粒子の核発生点付近などの特定領域の断面観察を行うこともできる。FIB加工した試料断面の表層に形成される損傷層は比較的厚いがイオン種であるGaの汚染はほとんどなく,結晶格子像観察や定性的な組成分析を行ううえで致命的な問題点はないと思われる。多彩な応用ができるFIB法は,従来より格段に進歩したTEM観察を可能にし,表面界面研究に飛躍的な発展をもたらすと期待される。