表面科学
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SIMS-ESDMS複合技法によるバックグランドピークの干渉のない最表面分析
関 節子住谷 弘幸田村 一二三
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1995 年 16 巻 2 号 p. 135-140

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抄録

ESDMSは,表面の吸着種だけでなく基板構成原子をもイオンとして脱離検出でき,SIMSと同様に高感度な表面分析法であることが確認された。しかしSIMSは,イオン衝撃がもたらす表面状態の複雑な変化のために,スペクトルには帰属困難な多数のバックグランドイオンが観測され,非常に複雑なパターンとなる。そのため,SIMSスペクトルから吸着汚染種あるいは基板構成原子を推定することはきわめて困難であった。 一方,ESDMSはSIMSと比べて,入射電子が試料表面に与える衝撃の程度は非常に小さく,フラグメントは少ない。そのため,無用なバックグラウンドピークがきわめて少なく,しかも長時間にわたってほとんど変動のないスペクトルが得られるので,ESDMSスペクトルからはダイレクトに表面種を推定することができた。SIMS-ESDMS複合技法は,SIMS分析と,SIMSでは困難である最表面種の特定に有用なESDMS分析を相補的に行える表面分析法といえる。 今後の課題としては,表面吸着物質はもとよりバルクからのESD現象におけるイオン化効率の測定が重要と考えられる。そのためには,この目的に適した専用装置を開発し,各種の実験パラメータ,特に入射電子ビームの最適化が重要と考えられる。

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© 社団法人 日本表面科学会
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