表面科学
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摩擦力顕微鏡
ミクロな摩擦力の解釈
森田 清三菅原 康弘藤沢 悟大田 昌弘上山 仁司
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1996 年 17 巻 1 号 p. 22-26

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抄録

 《力の単原子観察》を期待して開発された原子間力顕微鏡 (AFM) は, つい最近まで, 「AFMで何を見ているのか?」「何が見れるのか?」さえ不明の状態であった。ここでは, 原子レベルの接触 (斥力) 測定の場合, 光干渉方式のAFMではてこの 《Z変位》 つまり真の凹凸測定が可能だが, 光てこ方式の原子間力/水平力顕微鏡 (AFM/LFM) では, AFM機能でてこの 《たわみ 》がLFM機能でてこの 《ねじれ》 が測定可能で, 結果的には, 2次元の摩擦力ベクトルを測定できる2次元摩擦力顕微鏡 (2D-FFM) となることを紹介する。また, 光干渉方式の超高真空AFMを用いて, InP(110) へき開面の原子レベルの欠陥が観察できたことより, 非接触 (引力) 測定では真の力の単原子観察が可能なことも明らかにした。さらに光てこ方式のAFM/LFMつまり2次元摩擦力顕微鏡を用いて, ミクロな摩擦を原子レベルで研究した結果, 原子レベルでの摩擦の原因は原子間の凝着で, 凝着点は格子位置に2次元的にかつ不連続に分布しており, この凝着点へのスティック (凝着) とスリップ (滑り) が交互に起きるスティック・スリップモデルで, 周期や波形だけでなく, 摩擦力による (変位) 振幅が定量的に予想可能で実験的にも定量的一致が得られることを紹介する。

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© 社団法人 日本表面科学会
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