表面科学
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スパッタリング法により作製した(BaxSr1-x)TiO3薄膜の誘電特性
堀川 剛
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1996 年 17 巻 11 号 p. 660-665

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抄録

次世代のDynamic Random Access Memory (DRAM)の誘電体薄膜応用を目的として,(BaxSr1-x)TiO3薄膜の開発を行っている。本解説では,RFスパッタリング法により堆積温度を変えて作製した(BaxSr1-x)TiO3多結晶薄膜(x=0.1-0.75)の誘電特性について述べ,薄膜の誘電特性に及ぼす結晶性の影響をまとめる。(BaxSr1-x)TiO3膜の堆積温度が高くなるとある温度で膜中の結晶粒が塊状から柱状に変化し始め,それ以上の堆積温度では温度の増加と共に顕著に誘電率が増加する傾向が認められる。組成比を変化させた時,堆積温度が低い場合(660℃)には,比較的Srrichな組成(x=0.4)で誘電率の極大が観測されるが,堆積温度が高くなる(750℃)と,Barichな組成(x=0.75)に誘電率の極大が移動し,誘電率の値自体も大きくなる。これらの試料において,X線回折ピークの半値幅より見積ったグレインサイズと誘電率との間に強い正の相関が認められる。薄膜試料の誘電率は最大のものでも700前後とバルク値に比べて小さく,低温相である強誘電相が観測されない等,セラミックスとは著しく異なる特性を示す。この薄膜とバルクの誘電特性の本質的な相違は,材料を構成するグレインサイズの違いに由来すると推察される。

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© 社団法人 日本表面科学会
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