近年,化学振動反応を利用した並列演算処理の研究が盛んである。特に光感受性のBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応は,視覚系類似の画像処理を自動的に行うシステムとして注目を集めている。振動反応液上に光感受性単分子膜を形成すると,その光学イメージの直接観察から反応系表面における画像処理過程やパターン形成のダイナミクスについての情報を得ることができる。この技法を用いた最近の研究により,BZ反応液表面では化学波の断片化や周期2倍化といったバルクでは見られない非線形性が現れることが明らかとなった。さらに,単分子膜と反応液組成物質との光化学反応を利用して化学波の時空間特性を光制御する可能性が示された。このような分子組織体と非線形化学媒体との組み合わせは複雑な生体情報処理のモデル系として今後の展開が期待される。