表面科学
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皮膚表面形態と化粧品
川崎 清中山 靖久
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1983 年 4 巻 4 号 p. 245-246

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抄録

皮膚は外界の物理的・化学的刺激から生体を保護したり,発汗や毛細血管の拡張・収縮によって体温を調節するなど生命の維持に不可欠な種々の機能を営んでいる.皮膚はいくつかの細胞層から成っているが,その最外層は厚さ10~30μ程度の角質層と呼ばれる独特の層であって,皮膚の対外作用の多くはこの細胞層によっている。この角質層は通常の細胞とは異なり死んだ細胞の集積物であって,その名前の由来ともなっている強靱な角質―ケラチンタンパク質―が主成分を構成し物理的にも化学的にも強い抵抗力をもっている。即ち,生体にとって最重要物質である水分の透過を制御し,外界からの機械的圧力に耐え化学物質や紫外線・熱等に対して有効なバリヤーとして働いている。また,この角質層は,生体の保護という機能面とは別に,皮膚の最外層にあって,我々が直接見たり触れたりしている層であることから,皮膚の外観や感触とも密接に関連しているものである。 一方,基礎化粧品は皮膚表面に塗擦することにより肌荒れや日焼け等によって低下した皮膚の機能を助け末長く皮膚を健やかにし,外観を美しく保つためのものである。従って,化粧品に携わる者にとっては,角質層の科学,即ち皮膚の表面科学は非常に大きなウエイトを占めるものである。本稿では皮膚の表面科学の中でも最も基本的,直接的な“皮膚の表面形態”を中心にして,皮膚の機能との関連,化粧品による影響などについて紹介してみたい。

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© 社団法人 日本表面科学会
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