1995 年 12 巻 6 号 p. 6_535-6_552
本稿では,C++を拡張した分散実時間システム記述言語DROLが提供する多様なオブジェクト間交信セマンティックスとその実現について議論する.DROLが支援するオブジェクト間交信セマンティックスの特徴は最小被害機構の導入にある.最小被害は,時間制約内での障害通知および障害からの復帰を保証することにより,従来の記述言語では実現できなかった大規模分散環境での実時間アプリケーションの記述を可能にする概念である.本稿では,ARTSカーネル上に実装されたDROL実行環境を用いて,分散実時間オブジェクトによる最小被害機構の実現に要するコストを評価する.さらに,実際にアプリケーション・プログラムを記述,その動作例を示すことにより,モジュール間交信における最小被害戦略の有効性について検証する.