1997 年 14 巻 6 号 p. 6_535-6_546
MultithreadSmalltalkは,HPSと呼ばれているSmalltalkの実行時システムの大部分を再利用することでマルチプロセッサ向きに進化させた並列Smalltalkである.初期のMultithreadSmalltalkはナイーブなオブジェクト割付けの方法を採用していたため,オブジェクト割付けが処理速度のボトルネックとなっていた.本論文では,このボトルネックを解消するために採用した複数のプロセスで効率よくオブジェクトを割り付ける方法について記述する.4台のプロセッサを搭載するマルチプロセッサにおける計測の結果,本論文で提案するオブジェクト割付けの方法を採用する方がナイーブなオブジェクト割付けの方法を採用するMultithreadSmalltalkに比べ,複数のプロセスでオブジェクトを割り付けた場合1.8倍以上高速にオブジェクトを割り付けることができることがわかった.また,アプリケーションを実行した場合,処理速度を20~65%高速化できる.