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Print ISSN : 0289-6540
マルチエージェント・モデルのための時相認識論理とその効率的な証明探索手続き
丸山 晃生東条 敏小野 寛晰
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2003 年 20 巻 1 号 p. 51-65

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抄録

マルチエージェント・モデルで扱われるのは,それぞれのエージェントが相互に情報を交換し,獲得した情報と自分の持っている知識や信念に基づいて推論をおこない,その推論の結果として意志決定や行動をおこなうという状況である.特にそれぞれのエージェントやエージェントのグループがおこなう推論や判断などの論理的な側面について議論しようとする場合には,おのおののエージェントの知識や信念を認識演算として,また時間に関わるさまざまな様相を時相演算として明示的に表現することのできる論理体系が必要になる.当然のことながらその状況設定に応じて認識演算の間の依存関係や認識演算と時相演算の関係に対するいろいろな仮定を設けることにより多様な論理体系が構成されることになる.
本論文ではこのように認識演算と時相演算の両方を持つ体系である時相認識論理のうち,最も基礎的であるような2つの論理を導入する.さらにこれらの論理に対するシーケント体系を提案し,その部分論理式性(subformula property)を示す.そのことを用いてこれらの時相認識論理に対する効率的な証明探索手続きを与える.ここで証明探索手続きとは,与えられた論理式が証明可能か否かを判定するとともに,証明可能なときはいつでもその証明図を出力として与えるような手続きのことである.時相認識論理に基づくマルチエージェント・システムの検証などの応用において,このような証明探索手続きが有効に利用されると期待される.

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© 日本ソフトウェア科学会 2003
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