2007 年 24 巻 3 号 p. 3_111-3_126
本研究では,ユーザの誤操作や並行実行を含む複雑な作業プロセスにおける作業認識を実現するために,アプリケーションの状態に基づく作業認識手法を提案する.本手法では,作業を作業対象と,その対象の初期状態及び終了状態に基づいて定義する.作業認識は,これらの状態定義と,ユーザが操作を実行することによって蓄積される状態履歴とを比較することによって行う.これにより,従来手法のように事前に,操作に基づく完全な作業モデルを構築しておくことなく,作業遂行過程におけるユーザの操作列に影響を受けずに,適切な作業認識が可能になることを示す.また,本手法が従来のインテリジェントヘルプにおける作業認識の問題解決に有用であることを示すために,Emacs上に実装した作業認識システムとその結果についても説明する.