抄録
本稿では,コンテキストを考慮したポインタ解析結果(context-sensitive points-to analysis)を用いたメソッド呼出しパターン検査手法と,本手法の実装を用いた評価実験の結果を報告する.提案手法はオブジェクト指向型言語で記述されたプログラムを対象とし,特定のオブジェクトに対して実行時に発行されるメソッド呼出しの順番が適切であるか否かを静的に検査する.我々は検査対象オブジェクトに対するメソッド呼出し場所を精度良く識別するために,objsens型,cfa型,k-cfa型の3種類のコンテキストをそれぞれ利用した手法を開発した.さらに実装を用いて評価を行い,objsens型が最も高い精度で呼出し場所を識別すること,およびコンテキストを考慮しない手法に対してobjsens型の識別精度が5.5倍高いことを確認した.また,この改善によりパターン検査の精度が3.4倍向上するという結果を得た.