1992 年 9 巻 5 号 p. 5_390-5_402
Kyoto Common Lisp (KCL)の日本語化を通じて,言語仕様を変更することなくCommon Lisp処理系を日本語化することの現実性と実用性を探った.2バイト文字と1バイト文字を対等に扱う日本語化は,プログラムの可搬性やプログラム開発の効率という点では期待が高いにもかかわらず,実行効率やメモリ効率の点から問題があるように考えられており,ユーザに2バイト文字と1バイト文字の文字の区別を要求するような言語仕様の変更を行なった処理系が現存する.そこで,既存のCommon Lisp処理系をこれらの文字を対等に扱って日本語化し,従来の処理系と比較することによって,日本語化に伴う効率低下を実際に計測することを試みた.当然のことではあるが,日本語化にあたっては,文字や文字列などのデータ型の内部表現やその参照方法などを工夫することにより,効率の低下を抑えるように努めた.このようにして日本語化を行ったKCLの性能は従来のKCLとほぼ同等であり,効率低下の問題は克服できる.