オブジェクト指向言語のJIT(just-in-time)コンパイラやネイティブコンパイラにおいて,仮想メソッド呼出しを高速化する最適化が重視されている.本研究は,仮想メソッド呼出しの際に行われるメソッド検索のうち冗長なものを削除し,最初に行われた適切なメソッド検索結果を再利用することによって,仮想メソッド呼出しのコストを低減する手法を提案する.本手法は,メソッド呼出しをインライン展開にする際に要求される受信オブジェクトの型の一意性を必要とせず.同じメソッド呼出しに対する受信オブジェクトの型の一致性だけに基づいて,冗長なメソッド検索を除去することができる.また,静的に型が決められないオブジェクトに対して,実行パスによっては型が一意に決定できる場合に,メソッド検索部を移動させることによって,受信オブジェクトの型を一意に変換し,メソッドを直接呼出に変換する効果ももつ.本手法は,既存の最適化手法と補間的に使用することができ,目的コードサイズを小さく抑える必要がある組込みシステムに対しても有効である.