社会福祉学
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岩下壮一の救癩思想 : 指導性とその限界
輪倉 一広
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2003 年 44 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

カトリック社会事業の援助関係においては,<権威>が重要な鍵となる.岩下壮一は昭和初期における日本カトリック思想界の中心的人物であるとともに,晩年は主に救癩活動に従事した社会事業家でもある.本稿は,救癩事業家であった岩下の,患者との援助関係における「指導性」に焦点をあて,<権威>の視点からその実践思想の性格と構造を明らかにしようとするものである.岩下における指導性は,<権威>関係によりある限界点までの成果が顕著であった.しかし,<権威>は諸刃の剣であり,援助関係における両者の感情的な「間隙」は岩下に修復の必要を自覚させることなく,指導性の限界へと向かった.その根源的な要因は,「神愛」に直結した<慈善(カリタス)>を阻止する,自己否定的な性格をもつ<ネガティヴな犠牲>感が岩下の内面に存在し増幅したためであった.

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© 2003 一般社団法人 日本社会福祉学会
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