里親養育は,実親と暮らせない子どもを家族の一員として受け入れ,養育者と家庭的環境を提供する.そこでは,養育者との間に愛着関係を形成し,里子の育ち直しがある.出生後早期からの被虐待体験による主要な後遺症としての愛着障害を解消するには,実親に代わる大人(里親)と子ども(里子)との間に共時的で恒常的な関係性を確立し虐待体験により受けたトラウマに起因する課題の解決を図る必要がある.本稿では,3年間に及ぶ里親家庭へのインタビューという方法により記録した養育実践過程を整理することにより,里親家庭がこれらの課題にどのように取り組み,子どもはどのように愛着を形成し,トラウマを解消させていったか,その過程を分析している.被虐待児の育ち直し・成長に必要十分な要件として,特に初期においては里親を中心に環境全体の,受容的で,共振・共感的なホールディングの親密な関係性が必要である.これらの分析から,今後の課題として受諾直後の初期対応期の里親支援の必要性等を述べている.