2008 年 49 巻 2 号 p. 163-175
脳血管障害による高次脳機能障害の疑いをもつBさん(男性:45歳)は,X区A施設で自立訓練を受けていた.就労を希望する利用者Bさんに対して,本人の意思を尊重しながら,就労に向けた個別支援計画の作成とそれに沿った支援を家族,ケースワーカーと連携しながら,2006年8月〜2007年1月まで実施し,民間のC印刷所(適所授産施設)に適所がなされた.その後の1年間のフォローを実施し,IT関連企業就労に至った.この結果,Bさんの支援が一定の効果があったと推測される.その効果の要因として,就労情報の提供や,家族と他機関の連携などが挙げられた.さらにBさんの心理面での変化と自身の健康管理がなされ,他の利用者の就労意欲にも影響を与えていることが認められた.今後,高次脳機能障害者の就労を進めるには,就労後のフォローアップ,この障害の理解促進と,授産施設利用料の軽減や免除と,支援者の専門性向上が必要であることが示された.