2010 年 51 巻 1 号 p. 53-65
【目的】本研究は,患者本人が考える「ALSとともにその人らしく生きる」ということを明確にし,病いの意味づけという視点から検討する.【研究方法】8人のALS患者への聞き取り調査から分析を行い,調査結果に基づいて2人の研究協力者とディスカッションした.さらに,文献研究を行い,「病いとともにその人らしく生きる」ための「病いの意味づけ」を考察した.【結果・考察】「ALSとともにその人らしく生きる」ということは,ALSによって崩壊された内面的価値観,アイデンティティを再構築し,それによって主観的な経験の意味を修正することだと考える.主観的な経験の意味を修正することで,ネガティブな病いの意味づけが,ポジティブな病いの意味づけに変化する.その再構築のプロセスは内発的な変化であり,自己の対処方法に従った修正であると安定する.アイデンティティが再構築されると,患者は「本質的には変わっていない」と感じることができる.