社会福祉学
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介護サービス需要行動に関する実証分析 : 今後の介護保険制度改革に向けて
久保寺 重行
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2013 年 54 巻 2 号 p. 70-82

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抄録

現在,国の介護保険制度改革において,介護費用や介護給付費の抑制策が検討されているが,今後の介護費用等の動向を見通すうえで,介護サービス利用者の需要動向についての情報が必要である.本研究では,保険者別クロスセクションデータを用いて,「サービス種類の選択」と「サービス利用量」の2つの介護サービス需要行動を分析することで,介護保険制度改革の議論のための科学的根拠を示すことを目的としている.分析結果からは,(1)介護サービス需要がすべてのサービスにおいて価格非弾力的であることから利用者負担割合の引き上げが介護費用の抑制にはつながらないこと,(2)居宅サービスでは所得水準が高いほど需要が高まるという所得効果が出ており,一定以上所得者の利用者負担引き上げ策が一定の正当性をもつこと,(3)介護予防事業への取り組みは居宅サービスの利用が促進されている,という3点が示唆された.

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© 2013 一般社団法人 日本社会福祉学会
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