本研究の目的は,既存の要介護認定データから作成可能な要介護度維持改善率などの三つの指標が,特別養護老人ホームのケアの質を捉えているか,その基準関連妥当性をブラインドスタディによって検証することである.
A県内B圏域にある特養6 カ所を対象とした.評価指標による評価結果と,その評価結果を知らない調査員3 名が訪問調査によりケアプロセスを評価した結果が,どの程度の相関を示すのか順位相関分析を行った.
死亡・入院(推定)を含めたデータで分析した結果,要介護度維持改善率は「食事」,「機能訓練」,「相対評価」などの評価項目と強い正の相関(ρ=0.78~0.99)がみられた.食事摂取機能維持改善率は3項目と有意な相関(ρ=0.90~0.97)があったが,排泄機能維持改善率は有意な相関はみられなかった.
要介護度維持改善率は,包括的なケアの質を捉えている可能性が示唆された.知見の再現性の検証やほかの評価指標との関連を分析することが今後の課題である.