2016 年 57 巻 1 号 p. 71-86
本研究の目的は,精神障害のある人への居宅介護の支援効果の構成要素と関連要因の検討から,支援の特性を考察することである.1,357カ所の居宅介護事業所の責任者等を対象に質問紙を郵送し,有効回答票230通を分析した.「精神障害のある人に対する居宅介護の支援効果の認識」尺度を作成し,因子分析の結果,「基本的生活機能の向上とエンパワメントの準備」,「エンパワメントの促進と社会生活の充実」,「安心・安全・健康」の3因子が抽出された.これら3因子(全19項目)を従属変数に設定し,事業所や責任者等の特性,「直接支援技術」,「連携・協働体制」,「教育研修体制」の支援効果促進要因の重要度の認識との関連性を検討した.その結果,「直接支援技術」が共通して関連し,また,支援効果の評価の領域と事業所や責任者等の特性との関連要因の違いが認められた.支援効果は,家事援助等の直接効果からエンパワメントを軸に心理社会的側面に及ぶ可能性が示唆された.