社会福祉学
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論文
貧困児童の教育機会をめぐる排除と包摂――デリー・スラム地域における希望と学校をつなぐ「協同」に着目して――
茶谷 智之
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2018 年 59 巻 2 号 p. 79-91

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抄録

本稿では,デリー・スラム地域において,教育環境に関する貧困世帯の希望と学校が結びつく過程を分析し,貧困児童の教育機会をめぐる排除と包摂について考察した.教育熱の高まるスラム地域では,教育経験や識字能力の乏しい親が,教育環境に関する希望を叶えるため,教師や近隣住民など異なる立場の関係者に頼る.そこでは親の希望に沿うか否かにかかわらず,複数の関係者の非統一的な働きかけが合わさる「協同」によって,当初の希望が変容し,校長との交渉や入学抽選会参加の可能性が広がっている.これは多様な形態の学校と学歴形成への人々の期待がかみ合うことで教育機会が拡張すると捉える従来の見解に対し,その接合には人々の当初の希望を変容させる「協同」が重要であり,それが親個人や世帯の能力不足による教育機会の制限という点では同じ立場にある貧困児童の間に,新たな排除と包摂を生み出していることを示した.

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© 2018 一般社団法人 日本社会福祉学会
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