障害者の参加を阻む障壁には内面化された規範や他者との相互作用により生じる抑圧,それらの結果としての自己抑制といった明示的でないものも含まれる.本稿では,こうした障害をめぐるスティグマを障害者と健常者の間で共有する技法を明らかにする.そのために,障害者と健常者による芝居作り集団への参与観察を実施した.結果,芝居作りの過程では,障害者・健常者メンバーが互いの対等性と差異を確認しながら,一人一人の異なる障害をめぐる経験や出来事,ならびに経験に関わる人物の行動や気持ち,それらを支える思考について,別の他者に伝えるために,各メンバーが自分の経験を対応させながら理解を深める「対話」がなされていた.「対話」は,芝居作りという日常的な相互行為の場面とは異なる空間を実験的に構築することで実現していた.「対話」には障害のスティグマを可視化し,障害者と健常者の双方が解決すべき課題として共有していく可能性がある.