2021 年 62 巻 1 号 p. 27-37
本論では児童養護施設のケア効果について,主に「新しい社会的養育ビジョン」に挙げられる要因との関連,つまり,児童養護施設でのケアの規模,入所時点での児童の年齢,入所期間,入所施設の変更の有無によって,現在の入所児童の情緒と行動の問題に差が見られるかを検討した.
調査対象は,関東甲信越地域のA県内の全児童養護施設5施設の入所児童164人とし,対象児童を担当する職員から「Child Behavior Checklist (CBCL)」に回答してもらい,その総尺度得点とこれらの要因と関連を検討した.結果,統計的に有意な関連が認められたのは,ケア規模のみであり,その他の要因によるCBCL総尺度得点への影響は確認できなかった.
これらの結果から,児童養護施設におけるケアの効果については,社会的養育ビジョンに示される要因だけでなく,さらに広くほかの要因も含めて検討していく必要性を考察した.