日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8PE-03
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代謝研究のためのヒト肝細胞のバリデーション(10)- 手術摘出肝臓片からの遊離ヒト肝細胞調製の現状 -
*簾内 桃子酒見 和枝窪田 敬一上川 雄一郎内田 幸介繁原 英治藤崎 浩大野 泰雄
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キーワード: h-8, h-4, m-6
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抄録
【目的】外科手術切除ヒト組織の医学研究利用ネットワーク体制構築の一環として,日本人由来肝臓片から薬物代謝研究のための遊離肝細胞調製を行ったので,その現状について報告する.
【方法】獨協医科大学において,同意の得られた患者より摘出された肝組織片を,氷冷ヘパリン含有生理食塩水で脱血し,L-15培地に交換した.肝組織片は,バイク便にて氷冷下,約2時間かけて国立医薬品食品衛生研究所へ搬送した.遊離肝細胞は,コラゲナーゼ2段階灌流法により調製した.遊離肝細胞の代謝能評価は,7-Ethoxycoumarin (EC)およびTestosterone (TS)代謝活性を指標とした.活性の測定には,それぞれHEPES Krebs-Henseleit緩衝液およびLanford's 培地(日水製薬)を用いた.
【結果・考察】平成13年度末から平成14年度までの間に,ヒト遊離肝細胞調製のため7例 (53 - 77才)の摘出肝臓片が提供された.肝切除事由は,原発性肝癌,肝硬変,胆管症,肝細胞癌各1例および転移性肝癌3例であった.遊離肝細胞調製は,肝臓片の摘出から約6時間 - 9時間後に開始した.摘出肝臓片の重量は1.6 - 6.23 gの範囲内にあった.灌流不能な2例を除き,調製した遊離肝細胞のViabilityは45.8 - 84.7%を示した.生細胞の収率は極めて低く,薬物代謝能評価を行った2例のEC代謝活性は,20.4および40.3 pmol/min/106 cellsであった.また,TS 6β-水酸化活性は,567および47.7 pmol/min/106 cells を示し,遠隔地より搬送した肝組織片を用いても,十分な薬物代謝能を有する遊離肝細胞を調製することが可能になった.今後は,例数を増やすとともに,肝細胞の効率的な利用のための検討を行う予定である.
 なお,本研究はヒューマンサイエンス振興財団の援助を受けて実施した.
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© 2003 日本薬物動態学会
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