日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8S2A-8
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ヒト肝臓における取り込み・排泄に関与するトランスポーターの遺伝的多型による機能変化と臨床における意義
*岩井 めぐみ廣内 幹和鈴木 洋史西里 洋平井戸田 昌也小澤 正吾家入 一郎大坪 健司杉山 雄一
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キーワード: t-8, p-19, l-7
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抄録

近年、種々のトランスポーターが、薬物を含む異物の体内動態の規定因子となっていること、またそれらについて遺伝的多型の存在が明らかになりつつあるが、その機能解析は定量的な意味で未だ十分であるとはいえず、これまで、遺伝的多型が臨床現場においてどのようなインパクトを持つのかは不明であった。organic anion transporting polypeptide 2 (OATP2/SLC21A6)は肝臓血管側膜特異的に、一方、multidrug resistance-associated protein 2 (MRP2/ABCC2)は主に、肝臓の胆管膜上に発現が認められる。両トランスポーターの基質認識性には広範でかつ大幅な重複が見られ、estradiol-17β-D-glucuronide (E217βG), pravastatinといった様々な基質の血中から胆汁中への経細胞輸送に重要な役割を果たしていることが知られている。我々は、日本人における両トランスポーターの遺伝的多型の情報をもとにSNPs体発現系を構築・機能解析し、その影響について考察を加えた。その結果、MRP2においてS789FあるいはA1450Tの変異を持つ場合、細胞全体の発現量の減少及び局在の変化が観察され、結果として胆汁排泄に寄与しうるMRP2蛋白量の低下が予想されるが、臨床での解析はなされておらず、さらなる解析が必要とされる。OATP2においては、N130D, V174A の変異をあわせ持つ場合、細胞膜局在には変化がないものの、輸送活性の大幅な減少がおこることが観察された。この結果は、家入らの報告で、このハプロタイプ(*15)を有する日本人健常者において、pravastatinの腎外クリアランスの有意な減少が見られるという臨床での結果と定量的にも矛盾しないものである。以上より、両トランスポーターの遺伝的多型による局在・機能の変化が、臨床において薬物動態の変動につながる可能性を初めて実証できたと考えられ、今後更なる解析を進めていく予定である。

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© 2003 日本薬物動態学会
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