日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8B09-4
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多環芳香族炭化水素による脂質代謝異常の分子レベルにおける発現機構の解明
*糠谷 学高橋 芳樹斎藤 鉄也Frank J Gonzalez鎌滝 哲也
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キーワード: d-17, l-4, t-4
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抄録

【目的】ダイオキシン類や3-メチルコランスレン (MC) などの多環芳香族炭化水素 (PAH)は,脂質代謝異常および脂肪肝を引き起こすことが報告されている.そこで,我々はこれらの化合物による脂質代謝異常の原因を明らかにするために,DNAマイクロアレイを用いて無処置のマウスとMCを投与したマウスの肝における遺伝子の発現パターンを比較した.その結果,多くの脂質代謝酵素遺伝子の発現がPAHにより抑制されることを見い出した.また,これらの遺伝子は共通して核内受容体であるペルオキシソーム増殖薬受容体(PPARa) の標的遺伝子であったことより,PAHによる脂質代謝酵素遺伝子の発現抑制はPPARaシグナル伝達の抑制により生じている可能性が考えられた.そこで本研究では,PAHによるPPARaシグナル伝達の抑制機構とその分子機構について検討した.【結果および考察】PAHによりPPARaシグナル伝達が抑制されるか否か検討するために,PPARa結合配列を組み込んだレポータープラスミドを用いてレポーターアッセイを行なった.その結果,MC処置によりPPARa結合配列に対するPPARaの転写活性が抑制された.このことより,PPARaシグナル伝達はMCにより抑制されることが示唆された.また,このMCによるPPARaシグナル伝達抑制の原因について検討するためにPPARaおよびPPARaと2量体を形成するレチノイドX受容体(RXRa)のmRNAおよびタンパク質量について検討したところ,MCによりRXRaのmRNAおよびタンパク質量が減少することが明らかとなった.以上のことより,PAHによるPPARaシグナル伝達の抑制の原因はRXRaの発現抑制によるものであり,この抑制がPAHによる脂質代謝異常の原因である可能性が示唆された.

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© 2003 日本薬物動態学会
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