日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8S1-3
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無機リン酸トランスポーターの発現調節と高リン血症治療
*宮本 賢一
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キーワード: a-1, i-15, n-6, r-12
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抄録

無機リン酸(以下リン)は生体のエネルギー代謝、細胞膜の構成成分として生体機能維持に必須のイオンである。最近、新しいリン代謝系が発見され、リン代謝異常は、様々な病態に関連していることが明らかにされてきている。血中リン濃度を調節する機序として、小腸からの吸収、骨からの動員、腎からの排泄がある。そのうち腎は、血中リンの維持に最も重要な組織である。腎近位尿細管には、ナトリウム依存性リントランスポーター(type IIa Na/Pi cotransporter/ type IIc Na/Pi cotransporter) が局在し、血中リン濃度調節を担っている。Type IIa Na/Pi cotransporter は、刷子縁膜において迅速なエンドサイトーシス・エキソサイトーシスを受け、細胞膜上でトランスポーターの量的変化をもたらす。一方、type IIc Na/Pi cotransporterはリサイクリング機構により調節され、副甲状腺ホルモン(PTH)や高リン負荷は、トランスポーターの内在化を促進しリン利尿をもたらす。一方、小腸上皮細胞にはtype IIb Na/Pi cotransporter が局在し、リン吸収を担っている。ビタミンDは、type IIb Na/Pi cotransporter を調節する重要な因子である。さらに、新しく登場したリン調節因子(FGF23、MEPE, Stanniocalcin1,2, Phexなど)は、腎臓や小腸type II Na/Pi cotransporterを、様々なメカニズムで調節する。  高リン血症は慢性腎不全や長期透析患者に見られ、二次生副甲状腺機能亢進症や異所性石灰化を惹起する原因となる。これらの治療には、リン制限食が最も有効であり、様々なリン吸着剤が臨床で用いられている。最近、type II Na/Pi cotransporterを標的とした薬剤の開発が行われており、機能抑制や発現抑制機構が解明され、選択的なリン吸収阻害薬の有用性が報告されている。本講演では、高リン血症の治療標的としてのリントランスポーターの意義および、リントランスポーターの発現調節機構について概説する。

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© 2003 日本薬物動態学会
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