2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 224_2
末期腎不全患者にとって、腎移植は唯一の根治的治療であり、重要な腎代替療法の選択肢の一つである。生体腎移植において、ドナーの安全性は最優先事項であり、移植医療が正当な医療行為であるための前提である。私が移植医療に関わり始めた2000年台前半、ドナー自身の腎提供後の腎・生命予後を含めた安全性、獲得し得る医学的リスクに関する詳細な検討・報告はまだ乏しく、ドナーの安全性を保証するに足る論拠は不十分であった。以降現在に至るまで徐々に蓄積された新たな科学的知見に基づき、各国で生体腎移植ドナーのガイドラインが作成されているが、適格性の判断指標として用いる医学的項目の選択やその基準値について、ドナーの安全性の側面から、妥当性の検証やさらなる検討を実施する余地は多く残されている。以前、私たちは診療録調査に基づいた臨床研究を実施したが、それらの研究結果とドナー診療の実践を通じて認識するに至ったことは、ドナーの医学的安全性に関わる重要な診療プロセスである、腎提供術前評価、術後フォローアップの要点は、いわゆる慢性腎臓病(CKD)患者に対して行う内科的診療と比べて大きな相違はない、ということである。本講演では、私たちが報告した研究内容や解釈とともに、生体腎移植ドナー診療は腎臓内科医の日々の医療活動との親和性が高く、ぜひとも内科医が積極的に関わることが望まれる移植医療のフィールドの一つであることをお伝えたい。