2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s179_2
血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMA)は、臨床病理学的に微小血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia: MAHA)、血小板減少、血小板血栓に伴う臓器障害を三主徴とする症候群と定義される症候群で、病因別に4つの疾患カテゴリーに分類される。その中で、補体介在性HUSとしての非典型HUS(atypical HUS: aHUS)は、補体第二経路の異常活性化によりTMAを発症する病態で、妊娠や感染、手術などをトリガーとして再発することが知られている。原因となる遺伝子としてはCFHやCFI、MCP(CD46)、C3、CFB、THBD、DGKE、PLGなどがあり、その疾患予後、再発頻度などが原因遺伝子の種類に大きく依存している可能性があることが明らかとなってきた。抗補体薬が治療に使用されるようになり、疾患経過、予後は大きく改善したとされるが、移植時再発の抑止に加えて、継続した移植後再発の抑止を如何に行っていくべきかについてまだ確立した方法はない。移植腎の長期生着を目指すためには、本疾患の再発を如何に抑止するかが非常に重要である。疾患予後、再発頻度に大きく関与するこれら遺伝子変異を同定していくことは、腎移植前に検討しておくべきであり、その結果に基づく周術期および遠隔期の抗補体治療を組み立てるべきである。本講演では、これらの遺伝子変異に伴う疾患予後や治療継続・中止に対しての考えを考察し、概説する。