2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s301_3
BKウイルス(BKV)腎症は移植腎機能廃絶を引き起こしうるが、治療法が確立していない。その早期発見のためBKV血症のスクリーニングが推奨され、陽性例には免疫抑制剤の調整などが対応策となる。当科では血中BKV-DNA PCRを腎移植術後1.5か月・3か月・6か月・1年・2年・3年まで行い、陽性の場合はエピソード症例として追跡してきた。これまでに経験したBKV腎症の2症例を報告する。症例1:40代女性。親子間血液型不適合生体腎移植が施行され、免疫抑制剤はシクロスポリン(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、プレドニン(PRD)で維持された。術後1.5ヶ月後にBKV血症と判明し、CsA減量・EVR追加としたが、移植腎機能が徐々に低下したため腎生検を施行。BKV腎症+T細胞性拒絶の診断の元、ステロイドパルスが施行され、CsAはタクロリムス徐放性製剤(TACER)へ変更された。術後6か月後にBKVは陰性化し、腎機能はやや回復し以降安定した。症例2:50代男性。夫婦間血液型適合生体腎移植後が施行され、タクロリムス(Tac)、MMF、PRDで維持された。術後6ヶ月後にBKV血症と判明し、Tac減量・MMF中止、エベロリムス(EVR)が追加された。移植腎機能は良好だったがBKV血症が改善しなかったため、TacがTACERに変更された。1年プロトコル腎生検によりBKV腎症が確定したが、腎機能は問題なく経過した。BKV血症スクリーニングに基づく早期介入により、2症例とも移植腎機能を保護できた。