熱帯農業
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わが国の暖地におけるサトウキビの生長と乾物生産力について
第2報 生長にともなう茎・葉部乾物消化率の推移
高村 奉樹中野 尚夫
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1986 年 30 巻 4 号 p. 257-263

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抄録
サトウキビ苗を, 催芽し, 新植することによって, わが国の暖温帯でも高い乾物収量が得られることを前報において報告した.本報では, 飼料作物としてサトウキビを利用する可能性を検討するため, 暖温帯および温帯で栽培したサトウキビの茎・葉部について, 生育時期別にその可消化乾物率 (DMD) をセルラーゼを用いたin vitro分析法によって測定して, セルロース, リグニンおよびSiO2などの細胞膜物質 (CWC) ならびに細胞内容物 (CC) の量的推移との関係を明らかにした.得られた結果の概要は次のとおりである.
1. DMDの推移を部位別にみると, 生長にともなって茎ではその増大が著しいが葉では変化が小さい.DMDの最高値は茎で77%, 葉で58%であった.なお, 最終収穫時の茎のDMDは, 催芽苗を用いた新植のごとく, 初期生長を促進して乾物生長がより増大した区で高い値を示すことを認めた.
2. CCは茎が葉に比べて常に高い値を示し, また生長にともなって増大し, 最高65%であった.なお, 葉のCCは最高40%であったが, それは秋季以後, 低温の到来のやや早い地域で得られた.茎・葉部をこみにしたCCとDMDの間には, 0, 903の高い正の相関関係が認められた.
3. CWCについては, 葉で高い値を示し, 生長にともなってやや減少はするが, 最低で60%であった.茎でも生長にともなって減少し, 最低35%となった.また, CWCの消化率は生長とともに低下するが, その主要な原因として, 茎ではリグニン (ADL) , 葉ではSiO2の含量の増大が, また両部位を通じてセルロース含量の増大することが関連している.
サトウキビは生長にともなって, 茎・葉部のCWCの可消化率が低下することは他の飼料作物の場合と同様である.しかし, 乾物収量の主体を占める茎では, CWCは生長とともに相対的に減少するので, DMDは高く維持される.したがって, わが国の暖温帯, 温帯を含む暖地においても, サトウキビの初期生長を促進させ乾物生長を増大させることによって, 10aあたり約3トンの可消化乾物の生産が可能であることが明らかになった.
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