熱帯農業
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植物ホルモンによる浮稲茎切片の節間伸長の調節
東 哲司三原 富美子内田 直次安田 武司山口 禎
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1990 年 34 巻 4 号 p. 271-275

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抄録

深水下での浮稲節間の急速な伸長における各種植物ホルモンの役割を調べる目的で, バングラデシュの浮稲品種Habiganj Aman IIの茎切片を用いて, 異なる濃度のジベレリン酸 (GA3) ・アブシジン酸 (ABA) ・ベンジルアデニン (BA) ・インドール酢酸 (IAA) で処理した時の節間の伸長量の変化, 並びに深水とエチレン処理による内生ジベレリン含量の変化について調査した.
処理した植物ホルモンの中で, 単独のホルモン処理によって節間の伸長を促進したのは, GA3だけであった.IAAは, 10μMのGA3と共に与えると, 10μM以下の濃度でGA3による節間伸長を相乗的に促進した.高濃度のABA・BA・IAAはGA3による節間伸長促進作用を抑制した.
矮性イネ (短銀坊主) を用いる検定法で内生ジベレリン含量を測定した結果, 深水及びエチレン処理によって有意に節間の伸長が促進されたにも関わらず, 深水処理を行った茎切片の内生ジベレリン含量は増加したが, エチレン処理した茎切片での増加は認められなかった.
以上の結果より, 深水下での急速な節間伸長に関与する植物ホルモンとして, エチレンとジベレリン以外にIAAも考えられる.さらに, 深水下における浮稲の節間伸長において, ジベレリンとエチレンとは異なる作用過程を通じて関与していることが示唆される.

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