熱帯農業
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熱帯における野菜, 豆類を中心とした輪作体系の確立
第3報 異なった輪作様式下における作物の養分吸収
今井 秀夫鎌田 和彦馬 清華楊 玉峰
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キーワード: 窒素, 豆類, 野菜, 輪作体系, 燐酸
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1991 年 35 巻 3 号 p. 175-186

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抄録

熱帯における野菜・豆類を中心とした様々な輪作体系下における養分の動態が4年間にわたって研究された.同じ作物による養分吸収は異なった輪作様式下でも互いによく似ていた.大豆は多量の窒素と燐酸を種子中に蓄積するために, 他の作物に比べて3倍量の窒素と2倍量の燐酸を吸収し, 4トンの大豆収量を上げるためにはそれぞれ, 300kg/haと18kg/ha吸収される必要があった.大豆は約80%, 75%, 60%の窒素, 燐酸, カリを種子中に蓄積したが, カルシュウムとマグネシュウムは主として葉と茎に蓄積された.
作物栽培中の窒素バランスは根粒菌による窒素固定のため大豆で約200kg/haのマイナス値を示したが, 他の作物ではほぼ一致していた.燐酸とカリでは肥料及び土壌からの養分供給と作物の養分吸収が全ての作物でほぼ一致していた.
輪作作物の全乾物生産は燐酸, 窒素, マグネシュウムの吸収量と密接な関係があり, 燐酸吸収量だけでその変動の77%を説明できた.窒素とマグネシュウムはそれぞれ5%と6%の寄与率であった.変動因―残差プロットも燐酸だけが全乾物生産量の有用な指標になりうることを示している.よって, 熱帯の野菜・豆類栽培で高収量を上げるためには, 燐酸が最も重要な養分であり, その円滑な吸収と種子及び果実等への移行を促す栽培技術の確立が重要である.

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