ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) の耐塩性機構を光合成機能の観点から明らかにするために, 耐塩性の異なるエンレイとLeeの2品種について試験した.これら2品種を塩水処理条件下 (0.25および50mM NaCl) で4週間育成した結果, エンレイの光合成速度および生育量はLeeよりも塩ストレスの影響を強く受け, 特に50mM NaClでは顕著に減少した.気孔の影響を除いた最大光合成速度を気相酸素電極によって測定したところ, エンレイでは塩ストレスによって顕著に減少したのに対し, Leeではほとんど変化しなかった.従って, エンレイでは非気孔的要因による光合成阻害の影響が大きいと推察できる.エンレイにおける非気孔的要因として, 葉における高いNa+含有率の影響が挙げられる.Leeではエンレイよりも地上部におけるNa+含有率は低かったが, 逆に地下部ではエンレイよりも高いNa+含有率を示した.一方, 葉のアブシジン酸 (ABA) 含量を測定したところ, Leeでは塩濃度の増加に伴って顕著に増加したのに対して, エンレイではLeeの1/10以下のABA含量を示した.以上のことから, ダイズの耐塩性の品種間差では, 体内のNa+含有率の制御とABA合成能が関与する光合成活性の維持が一つの要因であると推察した.