熱帯農業
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南西諸島のキダチトウガラシの発芽特性および東南アジアに分布するキダチトウガラシの栽培化過程について
山本 宗立縄田 栄治
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2006 年 50 巻 3 号 p. 142-153

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抄録

南西諸島のキダチトウガラシ (Capsicum frutescens L.) の種子の発芽特性を調べた.恒温・暗黒処理区では南西諸島系統の種子の発芽は抑制されたが, 変温処理区, 光照射区では発芽が促進された.これら結果から, 南西諸島系統の種子は休眠性を持っていることが示唆された.南西諸島では, キダチトウガラシが鳥類などの散布により林の周縁部や住宅地の周辺で自生していることが確認されている.これは, 種子の休眠性に見られるように, 南西諸島系統の半栽培化の状態に起因すると思われる.以上の結果, 南西諸島のキダチトウガラシに休眠性があることが示されたので, 他の東南アジアの系統に広げて種子の休眠性について調査したところ, 東南アジアのキダチトウガラシ72系統のうち47系統の種子は休眠性を示さず, どの処理区においても短期間で種子が発芽した.これら47系統の植物体は残りの25系統よりも大きい傾向を示し, 47系統内では植物体の大きさと種了の発芽に要する日数の問に負の相関関係が見られた.一方で, 残りの25系統は休眠性を示し, 植物体も小さい傾向を示した.特に25系統のうち7系統は恒温・暗黒条件下で発芽が人きく抑制され, また果実は非常に小さく脱落性をもっていた.これらの結果から, 47系統はすでに栽培化され休眠性を失い, 植物体の肥大化とともに種子がより早く発芽するのに対し, 残りの25系統はまだ完全に栽培化されておらず, 栽培化の途中段階にあると考えられた.以上のように東南アジアのキダチトウガラシは様々な栽培化の段階にあり, 育種や園芸の遺伝資源として重要であると考えられる.

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