2019 年 5 巻 2 号 p. A_73-A_79
超高齢社会である日本では,高齢者の日常の外出手段となる公共交通を今後も維持することが重要な社会課題となっている.一方で,高齢化の進展に伴い,バス運転手の高齢化も進んでいる.一般の高齢運転者は,一度に確認すべき対象が多数存在する場面において安全確認回数が有意に少なくなる傾向にあることが先行研究で指摘されている.しかしながら高齢者がバス運転時にどのような運転行動を示すのか把握しようとした研究例は稀少である.本研究では,高齢バス運転手のバス運転時の視線を計測し,先行研究で計測した新人運転手,指導運転手の視線データとの比較を行った.その結果,同時に複数の注視対象物を確認すべき状況において,事故リスクを低減するために確認すべき対象物への注視回数が,高齢運転手は有意に少ないことが明らかとなった.