磁気共鳴画像(magnetic resonance; MR)を用いた灌流画像(perfusion-weighted image; PWI)は90年代に登場し,脳卒中の領域でも注目されるところとなった.最も一般的に使用される手法は造影剤を用いたdynamic susceptibility contrast(DSC)法である.さてPWIの登場と同時に,これを用いて積極的治療の対象となる組織(ペナンブラ)が存在するか否かを判断する材料として使われ始めたのがdiffusion-perfusion mismatch(DPM)という概念である.しかし,その是非には異論があり,その一因は様々な大規模臨床試験におけるネガティブデータである.即ちDPMの存在が必ずしも血栓溶解療法の適応決定に有効な判断材料とならないことを示すデータが発表されたからだ.定量性に関しても困難であることを想定させる研究結果が散見される.また組織予後の予測に関してもPWIを使って達成することは比較的困難と想定されている.このような観点からはPWIの存在意義は揺らぎがちである.しかし脳灌流画像に求める情報を診断的情報(病態把握)に絞って考えた場合,その存在意義は比較的理解しやすいと思われる.即ち患者の血流状態を「可視化」することは診療の現場における診断の確信度を向上させることに直結し,治療方針の揺らぎを少なくすることが可能となる.このように初期スクリーニングの段階における病態把握という観点だけでもPWIはすでに十分な存在意義があると思われる.