脳卒中
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総説
クロピドグレルレジスタンス
梅村 和夫
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2010 年 32 巻 6 号 p. 740-745

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抄録

クロピドグレルは,活性代謝物が血小板膜上のADP受容体であるP2Y12受容体に不可逆に結合し,ADPによる血小板凝集を抑制する.最近,クロピドグレルの抗血小板作用に個体差が存在し,低反応の患者ではリスクが増加することが報告され,その原因として薬物代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型の関与がいわれている.クロピドグレルはCYP2C19により活性体(AM)となるが,その酵素が欠損している比率は欧米人では約3%に対して日本人では約20%といわれており,このことからクロピドグレルの個体差は日本人で,より大きいことが予測される.われわれは,AMの薬物動態,さらにAMと抗血小板作用との関係を健康な日本人を対象に検討した.47名の被験者に300 mgのクロピドグレルを内服させ,投与後の血液中AM濃度をLC/MSで測定した.また,20 μM ADP刺激による血小板凝集抑制率も評価した.CYP2C19酵素活性が低下した被験者の最高血中濃度および血中濃度曲線下面積は正常のそれらと比べると有意に低値であり,凝集抑制率が30%以下の低反応の被験者は47名中15名の32%であった.また,AMの薬物動態パラメータと血小板凝集抑制率はよい相関がみられた.AMの薬物動態はCYP2C19の遺伝子多型により影響を受け,AMと血小板凝集抑制作用との間にはよい相関がみられたことからクロピドグレルの抗血小板作用の個体差はCYP2C19の遺伝子多型によるAMの濃度の差が大きく関与していることが考えられた.

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© 2010 日本脳卒中学会
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