脳卒中
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症例報告
Alpha comaの状態より回復がみられた重症くも膜下出血の1例
知禿 史郎佐藤 倫由大田 慎三後藤 勝彌大田 浩右
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2011 年 33 巻 6 号 p. 572-577

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抄録

今回われわれは,破裂動脈瘤による重症くも膜下出血の症例で脳波上alpha comaと診断し,治療により回復のみられた症例を経験したので報告する.症例は突然の意識障害で搬送された60歳,男性.来院時より深昏睡状態で両側瞳孔散大傾向を示した.CTでは強いくも膜下出血を認め,3D-CTAで前交通動脈瘤が確認された.脳波検査では全体的に単調なα波がみられalpha comaと診断した.動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行した.術後経過は良好で,意識レベルも改善し,簡単な日常会話が可能なまでに回復した.術後7週目の脳波では基礎波も正常化した.脳波上,alpha comaと診断された患者の予後は不良であることが報告されているが,近年予後の良い例も報告もある.病態として低酸素脳症が背景にあることが指摘されている.われわれの症例は,適切な呼吸器疾患の治療を行うことにより低酸素状態からの回復し,昏睡からの回復に応じた脳波所見の改善を示した.本例のような重症くも膜下出血例でalpha comaと診断された場合でも,入院時の他の電気生理検査の結果や,初期治療による臨床症状の変化を参考にしながら積極的な治療適応があるか決定することが勧められる.

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© 2011 日本脳卒中学会
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