2015 年 37 巻 3 号 p. 188-193
要旨:血栓溶解療法後の脳出血合併症の機序として,血管リモデリングに伴う血管の不安定化が関与する可能性について検討した.ラット塞栓性中大脳動脈閉塞モデルを用いて,代表的な血管リモデリング因子である血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)およびアンギオポイエチン1(Angiopoietin-1; Ang1)の,脳虚血後の変化について検討を行ったところ,虚血周辺部における① VEGF-VEGF 受容体シグナル活性化,② Ang1 陽性血管の減少が,脳虚血後24 時間という早期から確認された.治療介入として,①抗VEGF 中和抗体,VEGF 受容体阻害薬,および②組み換えAng1 の投与を行ったところ,脳出血は軽減した.以上より,血栓溶解療法後の脳出血合併症を抑制する治療として,血管リモデリング因子を標的とした治療介入が有効である可能性が示唆された.