2015 年 37 巻 5 号 p. 327-331
要旨:症例は64 歳,男性.左眼瞼下垂が出現し,近医受診し頭部CT でくも膜下出血と診断され当院紹介となった.瞳孔の軽度拡大を含む,左動眼神経麻痺を認めた.術前精査では左深部シルビウス裂~橋前槽にかけた限局性のくも膜下出血と左内頸動脈-前脈絡叢動脈分岐部に2 mm の動脈瘤を認めた.破裂瘤を疑い,開頭クリッピング術を行った.術中所見では,上記の動脈瘤に明らかな出血点を認めず,また,動脈瘤が動眼神経を圧迫している所見はなかった.その他の動眼神経麻痺を来す動脈瘤も認めなかったが,動眼神経は左後大脳動脈に圧排されていた.動眼神経麻痺で発症したくも膜下出血において,稀ではあるが動脈瘤以外の原因も考慮し,術前に検討をすべきである.